建築物省エネ法等改正案が今国会に上程される見通しとなったことを受けて、CAN-Japanメンバー団体が連名で以下の文書を衆参両院議長あてに提出しました。
本文
衆議院議長 細田 博之 様
参議院議長 山東 昭子 様
脱炭素の鍵「建築物省エネ法」改正の今国会での成立を
2022年4月15日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
国際環境NGO グリーンピース・ジャパン
国際環境NGO FoE Japan
特定非営利活動法人地球環境市民会議(CASA)
世界連邦運動協会
国際環境NGO CCL Japan
国際環境NGO 350.org Japan
現在、「建築物のエネルギー消費性能の向上に関する法律(建築物省エネ法)」等関連法の改正案が、与党自民党内において、参議院議員選挙を控えて国会会期延長を避けることが理由で今国会の提出が見送りの見通しと報道されていたのが、建築家や住宅メーカー、環境保護団体、さらに市民有志からの要望、15,000筆以上を集めた署名活動もあり、一転して今国会提出の見込みとなった。これを歓迎し、今国会での確実な成立を求める。
改正案は、2025年に全ての新築建築物に省エネ基準適合を義務付けることや、既存建築物の省エネ改修を進めること、さらに木材住宅・建築物の利用拡大などを盛り込むもの。気候危機回避が急がれる中、建設されれば長期に渡って存在する住宅・建築物は、早期にゼロエミッション化を進めることが急務であり、今回の法改正は、その点でまだ不十分さが多くあるが、それでも現行の取り組みを前進させるものとなる。
そもそも、日本における建築物の省エネ対策は、欧州(特にドイツ)など、段階的に断熱基準を高めてきた国と比べて周回遅れであり、この20年近くほとんど対策が進まなかったため、その差が歴然と大きくなり、市民は、”夏は暑く”、”冬は寒い”住宅において、「我慢の省エネ」を強いられてきた。
また、住宅・建築物における太陽光発電や太陽熱・地中熱の利用など再生可能エネルギー設置はポテンシャルが高いにもかかわらず、日本では導入が大変遅れている。最近冬季の需要の増大に供給が追いつかないリスクが問題視されているが、省エネを進めることで長期的にこのようなリスクを回避できる。
今回の改正はこのような住宅・建築物の対策を改善する。日本のカーボンニュートラルの実現の重要な対策分野として、今国会において審議し、早期に成立させるべきである。
今年度政府予算には住宅金融支援機構での「住宅省エネ改修融資」融資制度創設のための政府出資金10億円が含まれており、急務である既存住宅の改修をこれ以上遅らせることはできない。
その上で、住宅・建築物対策は、今回の法改正に止まらず、既存の住宅・建築物のストック対策も含めて対策が強化されることが求められる。また国民にとっては、イニシャルコストが高くなる分、エネルギーコスト(ランニングコスト)は抑えられることを十分に周知徹底するとともに、低所得者など経済的弱者のための住まいこそ真っ先に対策が強化されるべきことを認識した上で、炭素税導入の議論や税制優遇策とともに検討されることを期待する。
以上
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