こちらのページの内容は、世界120ヶ国、1100団体からなるClimate Action Networkのものです。

 

Climate Action Network(CAN:気候行動ネットワーク)

国連気候変動枠組条約事務局長
パトリシア・エスピノーザ様

2016年7月6日

豊かな知見と経験をお持ちのエスピノーザさんが国連気候変動枠組条約事務局長に就任されることを嬉しく思っております。ご存知のように、気候変動を止める行動のため、今は大変重要な時です。パリ協定という外交的成果をあげた今、私たちは、国際的にも国内的にも実施の段階に入っています。エスピノーザさんは、単に国連気候変動枠組条約の事務局長としてだけでなく、気候変動問題に取り組む人々の代表として、様々な国連機関による気候変動対策が相乗効果を生むように、そしてまだ気候変動問題に取り組んでいない層や解決のために重要な層にさらに働きかける役割があります。

ネットワーク組織であるCANが、パリ協定を成功させ、効果的に実施していくために重要であると感じられるポイントについて強調したいと思います。

行動の緊急性:CANは長年、地球温暖化について1.5℃を閾値とすることを提唱してきました。そして、可能な限り早期(遅くとも2050年まで)に化石燃料由来の排出をゼロにし、再生可能エネルギー100%へ移行する世界的な目標をパリ協定の中に設けるよう、いち早く求めました。現在、各国はそれぞれの国別目標案(INDC)を提出していますが、国連気候変動枠組条約事務局の統合報告書によれば、それらの排出削減目標は不十分であり、このままでは1.5℃目標の炭素予算(カーボン・バジェット)を2025年までに全て使いきってしまうとのことです。CANは、1.5℃目標のために必要とされる行動の緊急性に比べて、各国の目標が低いことに大変な懸念を持っております。つきましては、CANは、このギャップを埋められない現状に満足せず確実に克服するためにエスピノーザさんが中心的な役割を担われること、そして全ての国に対して、自国の対策の野心を引き上げるように、そして必要な国への支援を拡大させるように奨励することをお願い申し上げます。

パリ協定の成功は、単に技術的、手続き的な規定を実施することにあるではありません。それは、各国が野心的な対策を表明し、1.5℃という限界に合致するような大きな変革を各国が成し遂げるかどうかにかかっているのです。ただ署名だけでは十分でありません。パリ協定の目標を達成するためには、各国の野心を大きく引き上げる必要があるのです。UNFCCCの下での緩和・適応の技術専門家プロセス、そして世界気候行動アジェンダにおける国家と非国家主体の間の相互作用は、環境的に健全かつ追加的なイニシアティブにつながるのなら、2020年までの短期的な対策強化に貢献するでしょう。CANは、エスピノーザさんが、ハイレベルなリーダーと協力して、条約事務局から必要なサポートを受けつつ、これらのプロセスに関与することを奨励致します。

2016年と2018年の促進的対話(ファシリテイティブ・ダイアログ)、及び2023年のグローバル・ストックテイクパリ協定には、長期間にわたって協定の全ての要素を強化する3つの重要な決定があります。CANが、パリ協定の制度的要素のうち最も重要なもののひとつと考えているのは、時間が経つにつれて対策の野心引き上げが可能となり、実施を加速するために必要なギャップを特定するのに役立つからです。

促進的対話が成功するよう必要な関心が払われる必要がありますし、グローバル・ストックテイクの手順を作成する必要があります。同時に、短期の排出削減努力についてもただちに強化する必要があります。これらの会議における核心的な目的は、政治的気運を高め、野心を引き上げることです。これを成功させるべく、その構成・内容については十分な時間的余裕をもって準備されるべきでしょう。この構成・内容を計画する際、エスピノーザさんの役割は重大です。私たちは、結果として追加的にどれくらいの排出削減が実現したのかという観点から促進的対話の評価をすることになるでしょう。

市民社会による参加及び関与の拡大:効果的な気候政策の計画・実施において、市民社会は、国内レベルでも国際レベルでも極めて重要な役割を担います。CANとしては、国際レベルでの、特にUNFCCCのプロセスにおける市民社会の参加余地が縮小しつつあることへの強い懸念を表明したいと思います。ここ数年間、UNFCCCが非公式な交渉の場での非公開会議を増加させていることは、容認できません。UNFCCCは、市民社会に対して交渉をオープンにするという歴史上素晴らしい慣習から逸脱しつつあります。エスピノーザさんがこの問題を取り上げ、UNFCCCがオーフス条約で制定された原則に従うことを確保して頂きたく思います。市民社会は、各国が不十分な国別目標を改定するのに重要な役割を果たし、2018年の促進的対話のような重要な時期において、政治的意思を引き上げるのに必要な社会的な気運を作り出すのに不可欠となるでしょう。パリ協定が成功裏に実施されるか否かは、市民社会に対し参加・関与の余地がどれだけ与えられるかにかかっているのです。

エスピノーザさんと共に世界的な気候レジームの次の段階を築いていけますことを楽しみにしております。つきましては、私たちのネットワークとメンバーを紹介するため、ニューヨークでの気候週間の時期に、エスピノーザさんと直接お会いしお話する機会を設けて頂けないでしょうか。私たちは、エスピノーザさんと強固で有意義な関係を築いていけると確信しております。最後に、エスピノーザさんが新たにチャレンジングな役割に就かれることを祝福申し上げます。

敬具

Climate Action Network International Co-Chairs of the Board – Safa’ Al Jayoussi and Mohamed Adow

Climate Action Network-International – Wael Hmaidan, Director

CAN Arab World – Said Chakri, Co-Coordinator – said.chakri1@gmail.com

CAN Canada / Réseau action climat Canada – Catherine Abreu, Executive Director

CAN Eastern Africa – Geoffrey Kamese, Coordinator

CAN Eastern Europe, Caucasus and Central Asia – Nastassia Bekish & Irina Stavchuk, CoCoordinator

CAN Europe – Wendel Trio, Director

CAN Japan – Kimiko Hirata, Coordinator

CAN Latin America – Alejandro Aleman Treminio, Coordinator

CAN South Asia – Sanjay Vashist, Director

CAN Southeast Asia – Fabby Tumiwa, Coordinator

CAN Western and Central Africa – Aïssatou Diouf, Coordinator

China Civil Climate Action Network – Wang Xiangyi, Coordinator

New Zealand CAN – David Tong, Node Coordinator

Pacific Islands CAN – Krishneil Narayan, Coordinator

Southern African Region CAN – Rajen Awotar, Coordinator

US Climate Action Network – Keya Chatterjee, Executive Director

 


*English version is here