温室効果ガス排出削減目標の政府原案は受け容れられない
~日本は「1990年比40~50%削減」を掲げるべき~
2015年6月2日
6月2日、日本政府は、地球温暖化対策推進本部にて新しい温室効果ガス排出削減の国別目標案(いわゆる約束草案)の政府原案を示しました。「2030年に2013年⽐26%削減(1990年比18%削減)」という目標は危険な気候変動を防ぐために極めて不十分であり、受け容れられるものではありません。また、本来の期限だった2015年3月末に遅れたばかりか、6月の国連ボン会議及びG7サミットにも間に合わず、正式な提出は7月中旬から下旬となるとされたことも極めて残念です。
政府の原案では、GDPあたり温室効果ガス排出量、人口一人あたり排出量、GDPあたり一次エネルギー供給が「世界最高水準」としていますが、いずれの指標でも日本より優れた国があり、日本の目標水準が低いことの理由にはなりません。また、政府は、「2050年世界半減、先進国全体80%減」に整合的だと説明しますが、その根拠は示されていません。2030年までの対策を弱めることは、その後の世代にその責任を先送りすることになります。また、最新のIPCCの科学的知見では、大気中の温室効果ガスの累積排出量を減らすことの重要性が指摘されています。2030年までの排出削減を怠ることは累積排出量を増やすことになり、2℃目標の実現の足を引っ張ることになります。
世界の900団体からなるNGOのネットワーク”Climate Action Network”代表のWael Hmaidanは、「『2013年比で温室効果ガス排出量を26%程度削減』という水準の目標案を提出すれば、気候変動問題における日本の地位は失墜してしまう」と指摘するなど、世界の国際NGOやシンクタンク、メディアがこの目標水準を批判しています。近年のうち排出量が最も多い2013年を基準年にして「国際的に遜色ない」とする姿勢も、国際社会からの信頼を失いかねないものです。日本政府が2015年末に予定されているパリ合意の実現に貢献するため、CAN-Japanが提言する「1990年比で2030年までに40~50%削減」との目標を掲げるべきです。これは、より高い再生可能エネルギーと省エネルギーの目標及び脱化石燃料により、脱原発の方針と両立します。
6月7日からドイツのエルマウで開催されるG7サミットの最重要議題は気候変動問題です。安倍総理は日本の新しい目標案について方針を説明する予定とされています。パリで歴史的な成果を実現させるため、政府原案のような低い目標ではなく、真に野心的で公平な目標案を表明する必要があります。
プレスリリース
温室効果ガス排出削減目標の政府原案は受け容れられない~日本は「1990年比40~50%削減」を掲げるべき~(2015年6月2日)(PDF)
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※CAN (Climate Action Network) は、気候変動問題について、100か国以上の900を超える団体からなる国際的なNGOのネットワークである。CAN-Japan は、CANの中で、国内12団体からなる日本でのネットワーク組織である。