Climate Action Network Japan (CAN-Japan)
京都府京都市中京区帯屋町574番地高倉ビル305
https://www.can-japan.org/
2015/09/25
内閣総理大臣 安倍晋三殿
Climate Action Network Japan (CAN-Japan)の代表として、数ヶ月にわたる集中的な協議を経て、2030年に向けた持続可能な開発目標が間もなくとりまとめられることについて、心からお祝いを申し上げます。
Climate Action Network(CAN)は、約100国の950以上の団体から構成される、人為的な気候変動を生態学的に持続可能なレベルで抑制するための行動を促している世界規模のNGOネットワークです。CANに参加するグループとして、CAN-Japanは、気候レジリエントで持続可能な開発を達成するため、そして、今年の12月にパリで開催される国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)の成功に向けた強い政治的なシグナルを出すために、持続可能な開発目標の実施段階へと移行することが重要であると強調したいと思います。
CAN-Japanは、2015年9月に開催される国連総会での首脳演説におかれましては、国内の政策枠組みにおける気候行動の統合が必要であることを強調していただきたいと考えております。その政策枠組みには、化石燃料由来の排出を段階的にゼロにしていくこと及び再生可能エネルギー100%にするための国内計画の作成及び採択などが含まれます。
各国が持続可能な開発目標を実現できるような政治的かつ経済的なシグナルを、パリでのCOP21で確実に出すため、日本は、この機会を活かして、2015年パリ合意における温室効果ガス排出削減や気候変動への適応、途上国支援についての長期的ビジョンを採択することの必要性を強調するべきであると考えます。私たちが強調していただきたい主な点は次の通りです。
- 2050年までに化石燃料由来の温室効果ガス排出を段階的に削減し、再生可能エネルギー100%へ移行するための長期目標
- 厳しい気候リスクに照らして、温暖化影響に脆弱な100ヶ国以上の途上国が求めているように、地球温暖化を1.5℃以下に抑制すること
- 少なくとも5年ごとに、野心的な温室効果ガス排出削減目標を提出し、衡平性及び必要とされる排出削減量に照らしてこの目標を見直すメカニズム
- 全ての人々及びコミュニティの気候レジリエンスを確保するためのグローバルな適応目標。気温が上昇すればより大きな適応の努力が必要となることを認識し、公的で国際的な気候資金の少なくとも50%が今後適応に配分されることを確保し、損失と損害を関連づけ、脆弱な途上国への支援を確保すること
- 貧しい国々への資金支援について、先進国や、先進国と同等の責任と能力を持つその他の国々による約束が明確に説明されること。そのために、各国の公的資金の支援の全体目標(排出削減のための資金と適応のための資金は区別する)をもつこと。その目標は特定されたニーズに基づいて5年ごとに更新する
- 途上国支援の各国の全体目標が5年毎に更新されることを確保するためのプロセスを立ち上げること。先進国や、先進国と同等の行動の責任と能力を持つ国々は、貢献の約束をするべきである
低炭素かつ気候レジリエントな未来をめざすグローバルなビジョンのために、各国は、2020年までに必要とされる排出削減量に届くように政府の削減目標を引き上げるなど、短期的な緊急の行動もとるべきです。また、先進国は、2020年までに気候資金を年間1000億ドル拠出するという約束を達成するための明確な計画を示すことも必要です。
今年、各国が発表してきている2020年以降の温暖化対策に係る約束草案も、各国が持続可能な開発経路を進む上で極めて重要な役割を担います。しかしながら、私たちは日本が7月に提出した約束草案に深い懸念をもっていることを改めて申し上げたいと思います。日本の約束草案に書かれた温室効果ガス排出削減目標(2013年比で26%削減)は、気温上昇を2℃(1.5℃)以下に抑制するために、そして世界の国々の衡平性の観点から、大きな改善の余地があるといえます。
私たちは、今月のニューヨークでの安倍総理の演説において、気候変動に立ち向かうための日本の取り組みが強調されるとともに、全ての人のために温暖化のない未来に向けた明確なビジョンが示されることを信じております。
Climate Action Network Japan(CAN-Japan) 代表
平田仁子
注:本書簡の原文は英語であり、この日本語訳はご参考のための仮訳です。
ダウンロード用ファイル
【安倍総理への書簡】国連総会に際して(2015年9月25日・CAN-Japan)