危険な気候変動を防ぐための「目標」が必要~国際交渉の経緯~

危険な気候変動を防ぐために、国際社会は「産業革命以降の地球平均気温上昇を2℃未満に抑える」認識を共有しています。気候変動をめぐる最新の科学的知見をまとめたIPCC第5次評価報告書によれば、現在の各国の目標・対策では2℃未満を達成できません。COP21パリ会議で温室効果ガスの早期の大幅な削減を実現できる新枠組みに合意するため、各国は野心的な目標をもつ必要があります。

「国別目標案(約束草案)」とは?

COP19ワルシャワ合意とCOP20リマ合意に基づき、先進国と途上国の区別なく全ての国は2020年以降の温暖化対策の国別目標案(※)を、COP21パリ会議に十分先立って(準備できる国は2015年第1四半期まで、すなわち2015年3月31日までに)提出することが求められています。パリ合意を成功させるためには、各国が早期に野心的な目標案を提出し、新しい法的枠組み成立への積極的な姿勢を打ち出すことが必要です。

とりわけ、先進国であり、世界第5位の大排出国でもある日本は、交渉に貢献するためにも2015年3月31日までに野心的な目標案を提出する必要があります。CAN-Japanは、「温室効果ガス排出量を、2030年までに1990年比で40~50%削減する」との目標を提言しています(詳細はこちら)。

※Intended Nationally Determined Contributions:INDCs 日本政府は「約束草案」と訳しています。

国別目標案に含める情報

COP20リマ合意をうけて、各国の温暖化対策の中身をより明確にし、透明性を確保し、理解を深めるために、目標案には少なくとも次の情報を含めることが求められています。

  • 参照ポイント(基準年)
  • 実施の時間枠・期間
  • 目標の範囲と対象ガス
  • 計画プロセス
  • 前提と方法論(人為起源温室効果ガス排出量の推計・算定)
  • 吸収源
  • 自国の目標案が、各国事情を鑑みて、どのように公平で野心的であると考えられるか
  • 自国の目標案が気候変動枠組条約の究極の目的(気候システムへの危険な人為的干渉をなくす)の実現にどのように寄与するか

また、CANは、温室効果ガス排出削減に加えて、適応や資金についても情報を提示することを求めています。

提出された国別目標案の扱い

各国が提出した国別目標案は国連気候変動枠組条約事務局のウェブサイトに順次掲載されます。

ウェブページ:締約国から提出された国別目標案(INDCs as communicated by Parties)

各国が提出した目標案はCOP21に向けた政府間交渉の進展にも影響することが予想されますが、パリ合意において目標案がどのような法的位置づけになるのかは現時点では予断できません。

また、条約事務局は、各国の目標案を集計した統合報告書をCOP21に先立つ2015年11月1日までに準備することになっています。

なお、これらのプロセスと並行して、大学や研究機関、NGOや市民社会も各国の目標案の中身を検証し、排出削減の水準が十分か、国際的にみて公平と言えるものなのかを評価します。各国がもつ目標案には世界中から厳しい視線が注がれ、野心的な目標には賞賛が、不十分な目標には批判が集まることになります。日本でも、各国の目標案の提出状況を注視していく必要があります。

 

CAN-Japanでは、国別目標案の提出状況・一覧をとりまとめ、随時更新しています。

国別目標案提出状況・一覧