<プレスリリース>
2日延長してCOP27閉幕 Loss&Damageの基金の創設へ
1.5℃目標に向けて削減目標と実施の強化へ
2022年11月20日
特定非営利活動法人気候ネットワーク
代表 浅岡美恵
11月20日未明(エジプト時間)、国連気候変動枠組条約第27回締約国会議(COP27)は会期を2日延長し、長年の懸案であったLoss&Damage(損失と損害)のための基金の創設などを採択して閉幕した。その一方で、「実施のためのCOP」と名付けられた本会議において、COP26グラスゴー会議で採択された、排出削減対策の強化と実施の具体化が期待されていたが、グラスゴー気候合意での1.5℃目標を保持したものの、進展は乏しかった。
今夏、パキスタンでは国土の3分の1が浸水する甚大な被害が発生した。アフリカでは深刻な干ばつ被害に見舞われている。温室効果ガスの排出量が最も少ないにもかかわらず、最も大きな被害を受けている気候変動の影響に脆弱な人々の損失と損害に、国際社会が正面から立ち向かうことは正義の要請であり、不可避となっていた。アフリカで開催されたCOPでその道が開かれたことは、歴史的成果といえる。
一方で、排出削減対策を強化しなければ、気候変動の適応の限界を超えた損失と損害は拡大し続けることになる。つまり、気候危機回避のためには早急に排出削減対策を強化することが必要不可欠である。排出削減対策のためにかかるコストは、対策をとらないことによってもたらされる損失よりもはるかに小さいことは、国内外でのこれまでの多くの環境汚染の例が示している。気候変動におけるスケールはその比ではない。気候危機を回避し、世界が生き延びることができなければ、Loss&Damageに対応することもできない。アフリカでの化石燃料の新規開発計画に非難が高まり、ロシアのウクライナ侵攻によって再生可能エネルギーへの転換が加速している。全ての国の気候危機を回避するためにとるべき対策は、化石燃料依存からの脱却と再生可能エネルギーへの転換の加速であることは議論の余地がない。石炭火力の早期廃止はいうまでもない。公正な移行は既に重要な要素として位置づけられている。
それでも、COP27でグラスゴー気候合意を超える合意に至らなかったことは、化石燃料産業の最後の抵抗によるものであろう。COP27では、新たな課題として「みせかけの排出削減」(グリーンウオッシュ)による化石燃料の延命策を見抜き、許さないことが浮上した。日本における化石燃料由来のアンモニア混焼による「火力の脱炭素化」やCCS(二酸化炭素回収・貯留)の推進はその典型であり、世界から厳しい指弾を受けるであろう。ただちに石炭火力を維持する政策を見直し、1.5℃目標と整合する2030年目標と炭素の価格付けなど対策の強化を急がねばならない。
以上
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【プレスリリース】2日延長してCOP27閉幕 Loss&Damageの基金の創設へー1.5℃目標に向けて削減目標と実施の強化へ(2022/11/20)
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