プレスリリース

IPCC 第6次評価報告書の発表を受けて
――日本は温室効果ガス排出削減目標強化とエネルギー政策の転換を――

2021年8月10日
Climate Action Network Japan(CAN-Japan)

 2021年8月9日、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、第6次評価報告書の第一作業部会(科学的根拠)の報告書を発表した。
 
 世界気象機関と国連環境計画によって設立されたIPCCは、1990年から2013年まで5〜7年ごとに評価報告書を発表している。その科学的知見は、国連交渉を通して各国の気候変動政策に影響を与えてきた。

 第5次評価報告書から8年を経て発表された第6次評価報告書は、地球の平均気温上昇を産業革命前に比べて1.5度に抑えるというパリ協定が掲げる目標実現への緊急性が極めて高いことを改めて明らかにした。
 2030年までに残されたカーボンバジェット(残余炭素予算)はおよそ3,000〜4,000億t-CO2(67〜83%の確率)しかない。炭素予算はおよそ10年でなくなり、1.5度に上昇する可能性がある。 
 また、0.5度ごとの追加的な上昇で、熱波や激しい降水などの頻度や強度は増加していくことが示され、さらなる適応策が急務であることを浮き彫りにしている。加えて、海洋深部の温暖化と氷床の融解が続き、海面水位は数百年から数千年もの間、上昇し続けるなど影響は長期間に及ぶことも明らかになった。

 一方、同報告書は、今世紀末までの気温上昇を1.5度以内に留めることは、なお可能であることも示した。そのためには、削減目標の大幅な引き上げと、化石燃料から再生可能エネルギーへの転換、特に気候変動の主因である石炭火力発電の廃止が不可欠である。

 日本政府は、4月に2030年の温室効果ガス排出を46%削減(2013年度比)、さらに50%削減の高みに向けて挑戦する方針を発表した。また、7月に発表した「第6次エネルギー基本計画(素案)」において、電源構成における再生可能エネルギーの導入目標を36〜38%とする一方で、石炭火力発電を19%という高い割合で維持し続ける方針を示した。しかし、2030年46〜50%削減の国内目標自体が、世界の1.5度目標達成のために不十分であるだけでなく、示された気候・エネルギー関連施策とエネルギーミックスではその達成も危ぶまれ、世界の課題である気候危機の解決にはほど遠い。

 CAN−Japanは、第6次評価報告書が示した気候科学の要請を真摯に受け止め、危険な気候変動を回避するために、2030年の温室効果ガス削減目標を2013年度比50%削減以上(1990年比45%削減以上)へさらに引き上げることに加え、石炭火力発電の全廃と再生可能エネルギーの大幅な引き上げを求める。

CAN−Japanメンバー団体によるコメント:

小西雅子(WWFジャパン 専門ディレクター<環境・エネルギー>)

「この報告書は、私たちを脅かす猛暑や洪水などの現実の異常気象が、どの程度気候危機によるものかが科学的に示されるようになったことや、私たちが行動しなかった場合にどのような危機が待ち受けているかを評価しています。1.5度を目指す必要性が、より緊急性をもって示され、COP26(2021年10月31日~11月12日開催予定)に向けて、世界各国に2030年の削減目標と対策の引き上げが求められます。日本にとって急務なのは、先進企業だけではなく、国内全体の底上げをはかるようなカーボンプライシングなどの政策や脱炭素に向けたエネルギー転換を直ちに進め、少なくとも46%削減、50%以上の高みを実現していく道筋をつける事です」

以上

参考) この報告書は、「第6次報告書」の一部となる第1作業部会(科学的根拠)の報告書である。IPCCは、引き続き、第2作業部会(影響・適応・脆弱性)報告書、第3作業部会(緩和策)報告書、統合報告書を発表していくが、第1作業部会の報告書は、COP26の前に発表される唯一の報告書となる。

 

Climate Action Network Japan(CAN-Japan)事務局

〒604-8124京都府京都市中京区帯屋町574番地高倉ビル305気候ネットワーク内
MAIL: secretariat@can-japan.org TEL: 075-254-1011 FAX: 075-254-1012
WEB: https://www.can-japan.org Twitter: @CANJapan_org Facebook: climate.action.network.japan