声明 パリ協定の採択から5年を迎えて
2020年12月12日(土)
Climate Action Network Japan(CAN-Japan)
12月12日、気候変動に関するパリ協定が2015年に採択されてからちょうど5年を迎えました。この5年間、世界では気候災害がますます深刻化しました。日本でも深刻な豪雨や猛暑の発生確率を気候変動が引き上げていることが科学的に明らかにされています。海外でも、米国やオーストラリアの山火事、東南アジアやアフリカにおける水害などによって人々の生活、経済、生命が甚大な影響を受けています。グレタ・トゥーンベリさんが始め、日本の若い世代にも広がった気候運動「未来のための金曜日(Fridays For Future)」などの市民の声は、政治家たちの気候政策の優先順位を引き上げさせ、政策強化を促しています。現在、コロナ禍に人々の関心が向けられていますが、安全で健康的な生活を送ることのできる基本的人権を守るという意味において、感染症も気候変動もともに危機であり、その対応はともに緊急であると言えます。
パリ協定が採択から1年という異例のスピードで発効したのち、米国ではトランプ政権が誕生し、気候危機への対応を不安視する声も聞かれました。しかし、ホワイトハウス以外の米国と国際社会はパリ協定のもと結束を強めてきました。脱石炭・脱化石、省エネ・再エネが拡大するなど脱炭素と再エネ100%へのトレンドはますます加速し、これに伴って雇用増加や大気汚染の改善、化石燃料コストの節減といったメリットを享受する国・地域が増えています。クリーンエネルギー100%を公約に掲げて当選したバイデン氏は、パリ協定に復帰し、日本を含む各国首脳に対策強化を迫るとしています。EU諸国や米国の州政府、中国などもカーボン・ニュートラルを長期目標に掲げ、気候危機への対応を進める姿勢を次々に示しています。
他方、この5年間、日本では気候科学の警告とは裏腹に、パリ協定の1.5〜2℃目標を達成するために必要な目標設定も対策も進んできませんでした。国連交渉の中で2030年までの温室効果ガス排出削減目標を今年のうちに引き上げることが求められていましたが、日本政府は2015年に策定した不十分な水準のまま据え置いて今年3月に国連に再提出してしまいました。またこの5年間、CO2の最大の排出源である石炭火力発電所を国内外で推進し、今後数十年にわたる気候・環境汚染リスクを固定化し、座礁資産リスクをも招きました。菅総理は10月にようやく「2050年カーボンニュートラル」を宣言しましたが、その里程標となる2030年目標を引き上げるという意思は未だ示されず、これまで成功しなかった革新的技術や原発頼みの方針を今後も続けるようです。
5年前に、割れんばかりの拍手と歓声の中で採択されたパリ協定の精神を今一度思い起こし、遅くともCOP26グラスゴー会議までに気候目標の大幅な強化と、脱原発・脱石炭のエネルギー政策を決定すること、コロナ禍からの経済再生策において脱炭素に逆行する施策をやめ、脱炭素社会の実現に資する施策をこそ実施することを改めて日本政府に求めます。CAN-Japanは、CAN Internationalと連携しながら、日本・世界の気候変動対策の強化に向けて、国際交渉への参加や政策提言、再エネ100%の情報発信 、そして各種キャンペーンへの協力(署名キャンペーン「あと4年、未来を守れるのは今」やJapan Beyond Coalなど)を通じて、持続可能で公平な社会を実現すべく、強力に取り組んでいく決意です。
以上
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