本日、CAN-Japanは日本政府に対して「パリ協定と整合性のあるコロナ禍からの経済再生策を求める要望書」を提出しました。

パリ協定と整合性のあるコロナ禍からの経済再生策を求める要望書(2020年6月3日・CAN-Japan)

 


安倍晋三内閣総理大臣
麻生太郎財務大臣
西村康稔経済再生担当大臣
梶山弘志経済産業大臣
小泉進次郎環境大臣

パリ協定と整合性のあるコロナ禍からの経済再生策を求める要望書

2020年6月3日(水)

Climate Action Network Japan(CAN-Japan)

私たち、Climate Action Network Japan (CAN-Japan)(注1)は、気候危機の解決をめざして活動する日本の市民団体のネットワークです。CAN-Japanを含むClimate Action Network (CAN)は、世界120か国以上で活動する約1300以上の団体から構成される気候変動NGOの国際ネットワークで、国連気候変動枠組条約のプロセスの始まりからこの課題に深くかかわってきました。

CANインターナショナルは、今年5月に発表した提言で、新型コロナウイルス感染症の拡大にあたり、緊急対応として、命を守る対策、社会的弱者の救済、民主主義的手続きの遵守等を最優先すべきとしています。また、将来を見据えて、環境保全型・脱炭素型のインフラシステムの構築、パリ協定と整合性のある炭素価格の導入、持続可能でない化石燃料資源に依存する産業への経済支援の停止等を求めています。(注2)

気候危機や森林破壊は、未知のウイルスによる感染症の発生や蔓延など、公衆衛生のリスクを高めることが多くの専門家により指摘されています。パトリシア・エスピノーサ国連気候変動枠組条約事務局長が「新型コロナウィルスは今日の人類が直面している最も緊急の脅威だが、気候変動問題は人類が長期的に直面している最大の脅威であることを忘れてはならない」(注3)と述べている通り、気候危機対策も急がれます。

すでに日本政府は、「新型コロナウイルス感染症緊急経済対策」を発表し、第二次補正予算も閣議決定され今後国会に提出される予定でもあり、さらなる経済再生策が打ち出されると考えられます。

コロナ禍に対する経済再生策は、現在と将来の公衆衛生のリスク抑制及び気候危機対策のため、パリ協定の1.5℃目標に整合するものでなければなりません。同時に、人権尊重と民主主義を確保した、持続可能な社会・経済への投資であるべきです。また、国際社会における日本の役割として、途上国、特に脆弱な国の人々への支援も、経済再生策の中に位置付けられるべきです。

経済再生策において、気候危機対策や持続可能性を中心に位置付けることが必要であるという声は、環境保護団体だけなく、国連事務総長(注4)、自治体(注5)、市民(注6)、企業(注7)からもあがっています。これからの経済再生策を具体化させ、実施するにあたっては、これまでのエネルギー資源多消費社会に戻るのではなく、人々の命と暮らし、雇用を救うため、持続可能な社会と気候の安定化の促進のために、関連するステークホルダーと幅広い議論を実施することが重要と考えます。

よって、私たちは、安全で、心身ともに健康で充実した暮らしと、気候の安定化の双方を満たす持続可能な社会や経済を実現するため、政府に対し、以下を要望いたします。

 

  • コロナ禍における経済再生策は、パリ協定に基づく気候変動対策と整合性のある、持続可能な社会への転換を加速させるものとすること
  • コロナ禍における経済再生策の策定・実施にあたって、気候変動に取り組む市民団体を含む、多様なステークホルダーとの対話・熟議を行うこと

 

以上を通じ、政府として責任ある選択と行動を求めます。

以上

 

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(注1)Climate Action Network Japan (CAN-Japan)について

CANは、世界で気候変動問題の解決のために活動する120ヶ国以上の1300以上の団体からなるNGOのネットワークです。CAN-Japanは、CANの日本での集まりで、14団体からなり、国連気候変動交渉に参加し、国際的NGOネットワークと連携しながら政策提言や情報発信に取り組んでいます。https://www.can-japan.org/

<Climate Action Network Japan (CAN-Japan) 参加団体>350.org Japan、自然エネルギー財団、レインフォレスト・アクション・ネットワーク日本代表部、環境エネルギー政策研究所(ISEP)、「環境・持続社会」 研究センター(JACSES)、地球環境市民会議 (CASA)、国際環境NGO FoE Japan、コンサベーション・インターナショナル・ジャパン、国際環境NGOグリーンピース・ジャパン、WWFジャパン、気候ネットワーク、ピースボート、東アジア環境情報発伝所、世界連邦運動協会(14団体・順不同)

(注2)Fundamentals for Recovery & Economic Stimulus Packages in response to Covid-19

http://www.climatenetwork.org/sites/default/files/can_international_fundamentals_economic_recovery_may2020_0.pdf

(注3)UN News “Key COP26 climate summit postponed to ‘safeguard lives’”

https://news.un.org/en/story/2020/04/1060902

(注4)Secretary-General Says COVID-19 ‘Wake-Up Call’ Demands Recovery Built on Green Economy, Marking Earth Day 2020

https://www.un.org/press/en/2020/sgsm20051.doc.htm

(注5)“No Return to Business as Usual”: Mayors Pledge on COVID-19 Economic Recovery

https://www.c40.org/press_releases/taskforce-principles

(注6)「気候変動はコロナウイルスと同じくらい深刻な危機 – 世界の市民の3分の2が同意」

https://www.ipsos.com/ja-jp/two-thirds-citizens-around-world-agree-climate-change-serious-crisis-coronavirus

(注7)477団体(340企業、33自治体、104その他)からなる気候変動イニシアティブの運営委員会による声明

https://japanclimate.org/news-topics/green-recovery/

世界中の投資家グループも参加している「The Investor Agenda」の声明

https://theinvestoragenda.org/wp-content/uploads/2020/05/040520-Media-Release-Investor-Agenda-Sustainable-Recovery.pdf