日本政府のNDC提出に対するCAN-Japan声明

目標の据え置きは、気候危機を助長し世界の努力に水をさす。直ちに見直しに着手を

 

2020年3月30日(月)

Climate Action Network Japan(CAN-Japan)

3月30日、パリ協定において締結国に再提出が求められている国別約束(Nationally Determined Contribution; NDC)が内閣の地球温暖化対策推進本部において、現行のNDCを据え置いたままの内容で決定されました

 CAN-Japan(*)は、1月23日に発表した声明において、

  • NDCにおける2030年の排出削減目標(2013年比で年26%削減=1990年比で18%削減)を「2030年までに1990年比で少なくとも45-50%削減」に引き上げること。
  • 気候変動対策の優先順位を引き上げ、省庁横断的な検討プロセスを政府内にただちに立ち上げ、国民的議論を開始するプロセスをつくること。
  • 排出削減目標の見直しと連動して、地球温暖化対策計画及びエネルギー基本計画の改定を進めること。その中で、原子力と石炭を重視する従来の方針から省エネと持続可能な再エネ100%への転換、化石燃料への補助金や減税などの化石燃料優遇策の廃止、カーボン・プライシングの強化による省エネルギーの徹底を進めること。

などを要請していました。

 しかし、日本政府は、これまでの目標を据え置き、政策措置についても何ら強化を図らず、現行のNDCをそのまま提出してしまいました。削減目標の引き上げに関しては、NDCにおいて、現在の水準に止まらずに中長期の削減努力を追求していくことや、エネルギーミックスの改定と整合的にさらなる意欲的な数値を目指して5年ごとの提出期限を待つことなく削減目標の検討を実施するとしていますが、エネルギーミックスの改定や目標見直しの具体的な時期も明確に示しておらず、2030年の目標引き上げへの要請には全く応えられていません。それだけでなく、提出期限に伴うNDCは直近のエネルギーミックスに整合したものを提出するとして、気候変動政策の策定プロセスよりもエネルギーミックスの改定のプロセスに主導権を譲り渡してしまったかのような内容となっています。

 さらに大きな問題は、今回のNDC再提出に向けたプロセスにおいては、公開の検討や議論が一切実施されることなく、完全に政府内の密室の協議のみで決定されたということです。CAN-Japanでは市民参加を確保した透明性の高いプロセスの実施を提案してきましたが、今回の決定は、この要請に全く応えていないだけでなく、パリ協定に規定されている情報公開・公的参加の重要性や、各国に於いて気候変動に対応する際に地方自治体だけではなく市民を含む各種アクターが参画することの重要性をないがしろにした、非民主的なプロセスと言わざるを得ず、日本の国民全てのこれからに関わる重大な問題に対する対応として決して容認できるものではありません。

 私たちは、NDCを引き上げることが必要な理由として科学的知見に基づく緊急性、国際社会の要請、大排出国である先進国としての日本の責任の3つを挙げてきました。今回の日本の引き上げを伴わないNDCの再提出は、IPCCが約10年としている危険な温度上昇を防ぐために残された時間を浪費し、市民社会、国連事務総長及び国際社会からの度重なる訴えに耳をふさぎ、先進国としての責任に背を向けた後ろ向きのメッセージを国際社会に発信するものと言わざるを得ません。

 私たちは、政府に、気候危機を回避するために2030年までの行動強化が不可避であることを改めて認識し、今回のNDCで現行の2030年目標を固定させることなく、COP26の開催の時期を見据え、1年以内に気候危機を回避する観点からエネルギーミックスを改定し、NDCの排出削減目標を引き上げるとする具体的な時期とプロセスを速やかに決定し、国内の政策措置のレビューに着手することを求めます。

以上

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(*) CAN-Japanは、世界 120 カ国以上の 1300 以上の団体からなる気候変動 NGO のネットワーク「Climate Action Network(CAN)」の⽇本拠点。