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新しい日本の気候目標への提言新しい日本の気候目標への提言(改訂)

CAN-Japanは、2015年3月20日の国際シンポジウムにて、『新しい日本の気候目標への提言』と題し、「温室効果ガス排出量を、2025年までに1990年比で30〜35%、2030年までに1990年比で40~50%削減する」ことを提言しました。この提言は、2014年9月に発表した「2030年に向けた日本の気候目標への提言」を改訂したものです。

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eyecatch-CAN-Japan-endorse新しい日本の気候目標への提言

2014年9月12日(金)
2015年3月20日(金)改訂
Climate Action Network Japan (CAN-Japan) [1]

 

概要

Climate Action Network Japan (CAN-Japan)は、IPCC第5次評価報告書で示された気候変動の進行が深刻さを増していること、及び、2015年3月までに国別目標案を提出することが国連で呼びかけられていることを踏まえ、2015年末に合意される予定の2020年以降の新しい国際枠組みの成立に向けて、日本が積極的な役割を果たすことを求める。そのためには、気候変動対策の核となる温室効果ガス排出量の削減について、日本は野心的な目標を掲げ、実施していくことが必要である。具体的には、日本が掲げる2025年および2030年に向けての気候目標として、以下を提案する。

温室効果ガス排出量を、2025年までに1990年比で30〜35%、2030年までに1990年比で40~50%削減する(2010年比でそれぞれ31〜36%、41~51%削減)[2]

なお、上記CAN-Japan提案の数字は、国内の排出量削減(森林などの土地利用を含む)を想定しており、海外での排出量削減を通じた貢献は含んでいない。また、CO2以外の温室効果ガスも含む6つの温室効果ガス全体の排出量削減を想定している[3]。さらに、日本は、自国内だけでなく、海外での排出量削減にも、資金・技術支援を通じて積極的に貢献するべきである。

この提案にあたっては、3つの視点を考慮した。1つ目は、気候変動を抑制するために「グローバルに必要な」削減水準はどれくらいかという視点。言い換えれば、気候変動による深刻な影響を避けるためには、少なくとも世界全体でどれくらいの削減が2030年までに必要なのかという視点である。これは、最も重要な視点であり、以下の2つの前提ともいうべき視点である。2つ目は、他の国々と協力して気候変動を抑制しようと考えた時に、何が日本にとって「衡平な」削減水準であるかという視点。気候変動問題は、しばしば、国々の間で、どのように対策努力を分担することが平等で、公平なのかが争点となるため、これも極めて重要な視点である。3つ目の視点は、日本では、どれくらい削減ができるかという「削減ポテンシャル」の視点である。ただし、私たちは、昨今の議論で軽視されがちな、特に前2者の視点、つまり「グローバルな必要性」と「衡平性」の2つに重きを置いた。日本政府はすでに長期目標として2050年までに温室効果ガス排出量を80%削減するという目標を掲げているが、2025年/2030年目標は、脱炭素化に向けてのマイルストーンとしても重要な意味を持つ。

こうした目標を設定するための議論を、日本政府は、市民社会・NGOも含めたステークホルダーの意見を聞き、協議する場を設けつつ、発表することが重要である。その期限は、本来、2015年3月末までである。期限を守れない日本政府は、危機感をもって迅速にこれに臨まなければならない状況にある。また、政府だけでなく、企業・自治体も、この目標の設定を受け、それぞれに目標の検討を行うことが必要である。また2025年/2030年国別目標案を決めるにあたり、2020年についてのより野心的な削減目標の見直しも行われるべきである。

以上にあげた、排出量削減に関する取り組み(いわゆる「緩和」対策)に加えて、日本が提出する国別目標案には、適応についても、現在検討中の適応計画から、全体としての目標と政策の方向性を先取りする形で盛り込むことが望ましい。さらに、資金・技術支援についても目標を示すと共に、国際的な革新的資金メカニズムの構築に向けても貢献する方針を盛り込むことが望まれる。本提言では、排出量削減目標に焦点をおいたが、資金・技術・適応の各分野についても目標を設定することが望ましい。

野心的な気候目標達成の為には、それに対応したエネルギー目標や政策が必要である。まず、固定価格買取制度、電力システム改革、軽視されてきた熱需要対策の拡充などを通じ再生可能エネルギーの急速な普及促進が図られなければならない。そのための再生可能エネルギーの数値目標も設定されるべきである。また、停滞しているエネルギー効率をいまいちど改善に向かわせるために、省エネルギー目標も設定されるべきである。さらに、現在、公表されているだけでも41(約1,765万kW)にものぼる石炭火力発電の増設が計画されており[4]、これらが実現すれば、将来に亘って大量の排出が起きることを固定化していまい、気候変動対策に逆行する。石炭をはじめとする化石燃料への依存からの着実な転換方針も必要である。

気候目標は、しばしば原子力発電の推進理由に使用されてきたが、それは誤りである。野心的な気候目標と脱原子力の方針は両立できる。

 

[1] CAN (Climate Action Network) は、気候変動問題について、世界100か国以上で活動する900を超えるNGO(非政府組織)が集まったネットワークである。CAN-Japan は、そのネットワークの中で、日本での集まり(ノード)である。CAN-Japan には、気候ネットワーク、国際環境NGO FoE Japan、オックスファム・ジャパン、コンサベーション・インターナショナル・ジャパン、国際環境NGO グリーンピース・ジャパン、地球環境市民会議(CASA)、環境エネルギー政策研究所(ISEP)、レインフォレスト・アクション・ネットワーク(RAN)日本代表部、「環境・持続社会」研究センター(JACSES)、Office Ecologist、WWFジャパンが加盟している。

[2] 2005年比に換算した場合は、2025年までに36〜41%削減、2030年までに45%~54%削減となる。

[3]今後、三フッ化窒素(NF3)の追加等を受けてインベントリが改正される場合は、それに伴って目標も変更されるべきであるが、全体に占める割合が大きくないと予想されるため、本提言の内容に大きな影響はないと考えられる。

[4] http://sekitan.jp/data/


 

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