国連気候サミットに先立ち、これから日本が果たすべき責任を議論

2014年9月12日、CAN-Japanは、東京・参議院議員会館にて、特別シンポジウム「温暖化防止の新枠組み合意のための日本の新目標」を開催しました。2014年9月23日にはニューヨークで国連気候サミットが開催され、各国首脳が温暖化対策の決意を表明します。これに先立ち、本シンポジウムでは気候変動のこれまでとこれから、温室効果ガス排出削減目標のNGO提案などについて発表があり、質疑応答・ディスカッションが行われました。

シンポジウムの広報の期間は長くなかったにも関わらず、当日は150人近くの方にご参加いただき、地球温暖化問題に対する市民の方の関心の高さが改めて確認されました。

本シンポジウムのようすはこちらからご覧頂けます。(YouTube)

1.  報告「これまでの国際交渉の経緯」平田仁子さん:気候ネットワーク理事

まず、気候ネットワークの平田仁子さんより、国際交渉のこれまでについて発表がありました。京都議定書第1約束期間(2008〜2012年)の後の国際枠組みについては当初、2009年のコペンハーゲン会議(COP15)での合意が求められていました。しかし、それが達成されなかった現在、交渉の場はADP(ダーバン・プラットフォーム特別作業部会)に一本化され、2015年までに新しい国際枠組みの合意を得ようと目下交渉中というのが現状です。

 

2.  講演「気候変動交渉の見直し〜国連気候サミット・リマ・パリに向けて〜」中野潤也さん:外務省国際協力局気候変動課長

次に、外務省の中野潤也さんより、今後の交渉の見通しや日本政府の立場について講演がありました。注目される温室効果ガス排出削減目標の今後に関する説明は以下の通りです。

  • 2015年に新たな国際枠組みをつくるにあたって、各国が削減目標案をつく り、準備ができる国は2015年3月までに提出することが決まっている。
  • 各国が出した削減目標案をベースにCOP21・パリ会議で新しい削減目標をつくるということになっている。
  • 日本政府の削減目標案をどうするかについては、検討中。

また、個人的見解として、「日本では原発が稼働していないために、EUに肩を並べるような野心的な目標を出すのはなかなか難しいのではないか」と述べられました。ただし、「日本はこのような状況だから何もしなくていいわけではなく、日本がこれまでやってきた支援や、できることを交渉テーブルに載せていく」とのことでした。

 

3.  提言「日本の2030年目標のNGO提案〜国際交渉に貢献するために〜」山岸尚之さん:WWFジャパン気候変動・エネルギーグループリーダー

最終スピーカーとして、WWFジャパンの山岸尚之さんからは、NGOが提案する日本の排出削減目標についての提言がなされました。CAN-Japanは1990年比で2030年までに温室効果ガスを40~50%削減する目標を掲げることを提言しています。

この数値目標はどのように導かれたものなのでしょうか。まず、地球平均気温上昇を産業革命時から2℃未満に抑えようという国際的コンセンサスが存在します。そして、それを達成すべく政策目標を設定するためには、1.世界全体で必要な排出削減、2.各国の間の衡平性、3.日本の排出削減ポテンシャル、という3つの観点から検討する必要があります。従来日本では、3番目の点に議論が集中しがちで、「世界全体でどれくらい削減すべきか?」、「そのために日本がどの程度貢献すべきか?」という視点が不足していました。今回のNGO提案はそれらの点を重視し、達成可能性についても各種研究を踏まえた数値として、「1990年比で2030年までに40〜50%削減」という結論に達したのです。

ただし、ここに掲げた目標は現状から何も対策を講じず達成できるものではありません。再生可能エネルギー・省エネルギーの目標・政策の強化、脱化石燃料(特に石炭依存からの脱却)、脱原発と温暖化対策の両立などを進めることが大切です。

 

2015年COP21に向けて、日本の果たすべき役割を考えよう

2015年3月までに提出することが求められている国別目標案の提出時期を示せないなど、温暖化対策に対する日本の姿勢は依然として消極的で、国際社会からも懸念の声が聞かれます。[i3] 2015年末には、2020年以降の新しい枠組み合意を目指すCOP21パリ会議が開催されます。今こそ私たちは、世界第5位の排出国である日本が果たしていくべき役割を考えるべきではないでしょうか。